カテゴリ:読破口調( 22 )

国語入試問題必勝法

清水義範の初期作品が好きだ。

先日新聞を読んだら、古田選手が子どもにオススメの本として
『国語入試問題必勝法』を紹介していた。

理由は、色んな本を読んだ方が良いということだったが。


国語の長文読解問題にありがちな難解選択肢を、
分析的且つ適当に選ばせる切り口がおもしろい。

また、誰かの半生を長々と綴った文章について、
「色々あった。」と要約させてしまうのには笑った。

「確かに、他人にとってはそんなもんだよな~」と、何となく納得した自分がいた。
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by swanote | 2005-02-11 19:46 | 読破口調

EQ(9)―客観的評価項目

まとめると、

  IQだけが高くても成功するとは限らない。
  つまり、IQが高くてもEQが高いとは限らない。
  IQの高いいわゆる「秀才」が社会に出てつまづいたら、それはEQが低いから。

  EQが高ければIQも高くなる。
  しかも、EQが高ければ、充分に実力を発揮することができ、社会的にも成功する。

というのが、著者の主張だ。

そして、EQを客観的に評価する項目を最後の方に挙げている。
(自己評価向け、学生向け、社会人向けが入り混じっているのが気になるが)

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<情動の自己認識>
・自分の感情を認識し名称を与えることができる
・感情の原因をよく理解できる
・感情と行動のちがいを認識できる

<情動の管理>
・欲求の挫折を受けいれ、怒りをコントロールできる
・口論、殴り合い、授業妨害が少なくなる
・怒りを腕力に訴えることなく適切に表現できる
・停学や退学処分が減る
・攻撃的・自滅的行動が減る
・自分自身や学校や家庭を肯定的に受けとめる
・ストレスを適切に処理できる
・寂しさや社会的不安が減る

<情動の建設的活用>
・責任感が向上する
・眼前の課題に集中できる
・衝動が減り、自制心が働く
・学力テストの成績が上がる

<共感―情動の読みとり>
・他人の立場に立って見ることができる
・他人の感情を敏感に受けとめ共鳴できる
・他人の話をよく聞ける

<人間関係の処理>
・人間関係を分析し理解できる
・紛争を解決し意見の相違をまとめられる
・人間関係のトラブルを解決できる
・自分の意見をはっきりと効果的に主張できる
・他人に好かれ、社交性がある。友達と仲良くできる
・友達に人気がある
・思いやりがあり思慮深い
・会社に対して肯定的でグループの和を乱さない
・他人と共有し、協力し、助け合える
・他人との接し方が民主的

-----------

EQは、だいたい思春期までに学習する。
EQを学習しそこなうと、大人になって修正するには何倍もの苦労が必要だ。

ところで、最近なぜかヒットしている『頭がいい人、悪い人の話し方』では、

 社会に出るとテストの成績で評価されることはなくなり、
 話し方で評価されるようになる。

といって、頭の悪い人の話し方を列挙している。

しかし、著者が「頭の悪い人の話し方」というように評価しても、
その話し方が、実際に世間で本当に低い評価となるか考えると、どうも的外れな気がする。
社会で高い評価に繋がる話し方を具体的に示せていないのも信憑性に欠けるところだ。

   頭がいい人、悪い人の話し方


たしかに、社会ではテスト成績などで評価されることは少なくなる。
つまり、IQを評価する機会が少なくなる。


アメリカの雑誌TIMEでは、この本を紹介するとき、

「人生で成功できるかどうか、
本当の意味で聡明な人間かどうかを決めるのは、
IQではなくてEQの高さだ。」

と書いた。

この記事が全米で話題になり、「EQ」という言葉が広まった。
この本も、1995年に発売されて以来36週以上連続ベストセラーになっている。

話し方よりもEQのレベルのほうが、
世間で認められるのではないだろうか。
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by swanote | 2005-01-19 22:19 | 読破口調

EQ(8)―古き良き時代

この本を取り上げた時に、この著者が日本人の精神も勉強していることに少し触れた。

でも、具体的に日本人について触れているのは2ページぐらいだ。
しかも1950年代。

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テリー・ドブソンは、1950年代に日本へ渡って
初めて合気道を学んだアメリカ人の1人だった。

ある日の午後、ドブソンが電車で東京郊外の家に帰る途中、
からだが大きくて、けんか早そうで、ベロベロに酔っぱらった汚い男が乗りこんできた。

千鳥足の男は、周囲の乗客を威嚇しはじめた。

大声で悪態をつきながら、男は赤ん坊を抱いた夫人をぶん殴った。
婦人はよろけて、近くにすわっていた老婦人の上に倒れかかった。
老婦人は飛び上がるように席を立ち、先を争って車輛の端へ逃げる乗客の群れに加わった。

酔っぱらいは何度かこぶしを振り回したあと(カッカしているので狙った相手に当たらない)、
車輛の中央に立っている金属の握り棒をつかみ、
大声でわめきながら棒をゆすってはずそうとしはじめた。


毎日8時間も合気道の練習をこなして体調万全だったテリーは、
「誰かがひどいけがをする前に自分が出ていってあの男を止めなければ」と思った。

しかしその時、合気道の先生の声が脳裏によみがえった。

「合気道は和をめざす。
争う心を抱いた者は、その時点で天地とのつながりを断ったことになる。
人を威圧せんとする者は、すでに敗れたに等しい。
合気道とは、争いを収める道。争いを起こす道ではない」

事実、合気道を始めるとき、テリーは決して人にけんかを売らないことと、
護身以外の目的で武術を使わないことを約束した。


しかし電車内の状況を見て、テリーは今こそ合気道の腕を現実に試すときが来たと思った。


そこで、乗客全員が凍りついたようにすわっている車内で、
テリーはわざとゆっくり立ち上がった。

テリーに気づいた酔っぱらいは
「なに、外人じゃねえか。きさま、日本の礼儀作法を教えてやる!」と大声をあげ、
テリーにむかって身構えた。


しかし酔っぱらいがとびかかろうとした瞬間、

「よう!」

と場ちがいに陽気な声が車内に響いた。


まるで突然親しい友達に出くわしたような上機嫌の声だった。

不意をつかれて酔っぱらいがふりかえると、
70代とおぼしき和服の小柄な日本人がすわっている。


老人は酔っぱらいにむかって嬉しそうにほほえみかけ、
快活な調子で「こっちへおいでなさい」と手招きした。

酔っぱらいは
「ばかやろう、お前と話すことなんかあるもんか」と、
けんか腰で近寄っていった。

テリーは、酔っぱらいが少しでも乱暴な真似をしたら殴り倒してやろうと身構えていた。


「おまえさん、何を飲んできたんだい?」老人は酔っぱらいを見つめて尋ねた。

「酒だよ。てめえに関係あるか、ってんだ」

「酒か。いいねえ。そりゃあ、いい…」
老人は温かい口調で応じた。


「いや、じつは私も酒には目がないほうでね。
毎晩うちのバアさんとふたりで―バアさんは76になるんだがね―
ちょいと燗をつけて庭で一杯やるんだよ。縁台に腰をかけてね…」

家の裏手にある柿の木のこと、庭の草木のこと、晩酌のこと―老人は話しつづけた。


老人の話に耳を傾けるうちに、酔っぱらいの表情がやわらいできた。

握りしめていた両のこぶしから力が抜けていく。

「ああ。柿はオレも好きだ…」
酔っぱらいの声が消え入るように小さくなった。

「そう」
老人の声は元気だ。


「お前さんにもよく出来た奥さんがおいでだろう?」

「それが死んじまってよ…」

泣きだした酔っぱらいは、悲しい身の上話を始めた。
妻をなくし、家をなくした。仕事もなくした。自分で自分が情けない、と。


ちょうどそこで、電車はテリーが降りる駅に着いた。

電車から降りる時、背後で
「ここへ来て、お前さんのつもる話を聞かせてもらおうじゃないか」という老人の声がした。

ふりかえると、酔っぱらいが電車のシートに長々と寝そべっていた。
老人の膝に頭を乗せて。
--------



著者は、
--------
怒りの頂点にある人間を静めるのは究極の社会的技術だろう。

怒りの制御や情動の伝染に関するデータから考えると、
怒っている人間に対処するにはまずその人の意識をそらし、
次にその人の気持や視点に共感し、
それからもっと生産的な気分になれる別の話題に関心を引きよせる、
という方法が有効ではないかと思う。

いわば情動の柔術のようなものだ。
--------

と述べ、EQが輝いた瞬間の例として老人と酔っぱらいのやり取りを紹介している。


初対面の赤の他人(しかも害を被る可能性もある危険人物)に対して、
ここまで腰を落ち着けて相手に向き合い、心の交流を持てる人は、
今も日本にいるんだろうか?
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by swanote | 2005-01-19 03:33 | 読破口調

EQ(7)―マシュマロ・テスト

あなたが4歳の子供だとする。

あなたに向かって、実験者が次のように言う。

「ちょっとお使いに行ってくるからね。
おじさんが戻ってくるまで待っててくれたら、ごほうびにこのマシュマロをふたつあげる。
でも、それまで待てなかったら、ここにあるマシュマロひとつだけだよ。
そのかわり、今すぐ食べてもいいけどね。」

4歳の心には、大きな試練だ。
情動と抑制、イドとエゴ、欲望と自制、欲求の充足と遅延のあいだで
永久に繰り返される葛藤の縮図だ。


子供がどちらを選ぶかは、多くのことを語ってくれる。
性格が端的に読み取れるだけでなく、その子が一生たどる人生の軌跡まで想像できる。


この実験は、1960年代にスタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルが
大学構内にある付属幼稚園で始めたもので、
研究対象となったのはおもに大学の教職員や院生らの子供たちだ。

研究では、4歳の子供たちが高校を卒業するまでを追跡調査した。


4歳のうち何人かは実験者が戻ってくるまでの気の遠くなるような15分ないし20分間を
がまんして待つことができた。

待っている間、子供たちはマシュマロを見なくてすむように両手で目を覆ったり、
腕組みをした上に顔を伏せたり、自分を相手におしゃべりをしたり、歌をうたったり、
手遊び足遊びをしたりして、内なる欲望と戦った。なかには、眠ってしまおうとする子もいた。

そうして最後まで頑張りぬいた子供たちは、ごほうびにマシュマロを2個もらった。

おなじ4歳児でも、より衝動的な子供たちは目の前の1個のマシュマロに手をのばした。
しかも殆どの場合、実験者が「お使いに行く」ために部屋を出た直後に。


このときの衝動への対処法が予言したことは、それから十数年後、
園児たちが青年になった時点で実施された追跡調査で明らかになった。


即座にマシュマロに手を伸ばしたグループと
実験者が戻るまでがまんできたグループのあいだには、
情緒や社会性において劇的な差が生じていた。


4歳のときに誘惑に耐えることができた子は、
青年となった時点でより高い社会性を身につけていた。

少々のストレスで破綻したり行き詰ったり後退したりせず、
プレッシャーにさらされても狼狽したり混乱したりすることが少ない。

困難な課題にもすすんで立ち向かい、難しそうだからといって投げ出したりしない。

自分に自信を持ち、信頼に足る誠実さを持ち合わせている。

いろいろなプロジェクトに率先して参加する。

そしてマシュマロテストから10年以上経過した時点でも
目標を達成するために欲求の充足を先へ伸ばすことができた。


しかし、マシュマロにすぐ手を伸ばした3分の1くらいの子供たちには
このような長所がそれほど認められず、反対に心理的に問題の多い姿が
浮かび上がってきた。

青年期を迎えた彼らは対人関係を避けようとする姿勢が目立ち、
強情な反面、優柔不断で、小さな挫折にも心の動揺を見せる。

自分自身のことを「だめ」な人間、あるいは無価値な人間と考える傾向がある。

ストレスを受けると動けなくなったり後退しやすい。
疑い深く、自分が「恵まれていない」ことを恨み、嫉妬心を抱きやすい。
感情の起伏が激しくいらだつと過激に反応しやすいので、言い合いやけんかになりやすい。

そして、10年余りの歳月を経ても、
やはり彼らは欲求の充足を先へ延ばすことができなかった。


幼い時期に少しだけ顔を出していた特質は、
長ずるにつれて広範な社会的・心理的能力となって開花する。

衝動をこらえる能力は、ダイエットから医者になるための勉強に至るまで、
あらゆる努力の基礎となる。


さらに驚くべきことに、
高校を卒業する時点でマシュマロテストの子供たちを再び評価してみたところ、
4歳のときに忍耐強く待つことのできた子供は、そうでない子供と比較して、
学業の面でもはるかに優秀なことが分かった。

親の目から見た評価も、この子達が優秀な生徒だったという点で一致している。

自分の考えを言葉で的確に表現でき、
理性的な応答ができ、集中力があり、
計画を立てて実行する能力に優れ、学習意欲も高い。
SAT(大学進学適性試験)の点数も非常に良い。


マシュマロテストの対象となった児童の中で、

マシュマロにすぐ手を出した3分の1の子供たちは、
言語分野の平均点が524点、数学分野の平均点が528点だった。

マシュマロを長く我慢できた3分の1の子供たちは、
言語分野が平均610点、数学分野が平均652点だった。

総合で210点の差がついたのである。

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4歳児が近くにいる人は、このマシュマロテストをやってみたらどうだろうか。
IQが高いより、EQが高いほうが社会的な成功を収めると言われている。

このテストによって、情動のコントロールに必要な基礎力が、
子供に身についていることが分かればちょっと安心できるかもしれない。

ただし、このテストでマシュマロをすぐ食べてしまったからと言って、
子供の将来を決めつけて嘆いてしまうことは、子供に悪影響を及ぼすだろう。
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by swanote | 2005-01-15 23:59 | 読破口調

EQ(5)―脳のハイジャック

例えば、
「どうしてあんなに頭にきたんだろう?」と後で後悔するような怒りの爆発は、
その瞬間に、大脳辺縁系の一部である「扁桃核」が、脳を乗っ取っていると考えられる。

感情の爆発は、神経がハイジャックされたために起こる。

大脳辺縁系の一部が緊急事態を宣言し、脳全体を制圧してしまう。

これは、思考を司る大脳新皮質が働きはじめるよりも一瞬早く発生する。


そのため、大脳新皮質は、
事の是非を判断するどころか、全体の状況を把握する暇さえない。

こうした脳ハイジャックによって、感情を爆発させると、
終わった後、本人にも何が起こったのかよくわからないという点が特徴的だ。


ちなみに、酒が入ると感情が爆発しやすい。

しかし、これは扁桃核が緊急事態を察知して脳を乗っ取ったというよりも、

むしろ、大脳新皮質がアルコールで酔っ払って活動をサボっているから

情動を司る大脳辺縁系がやりたい放題しているだけといえる。

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by swanote | 2005-01-09 23:59 | 読破口調

EQ(4)―脳の進化

私たちの知性は、根本的に異質な2通りの認識モードが作用しあって成り立っている。

「考える知性」(=頭)と「感じる知性」(=心)だ。


「考える知性」は、事態をきちんと把握し、熟慮吟味し、思慮分別をつける。

「感じる知性」は、衝撃的で、パワフルで、ときに非論理的な命令を出すこともある。

頭で「考える」時より、心で「感じる」ときのほうが、確信が一段と強い。


普段、この2通りの認識モードは、緊密な連繋を保ち、
うまくバランスを取り合って働いている。

しかし、情動が強ければ強いほど「感じる知性」が支配的になり、
「考える知性」は無力になる。


このことは、遠い原始の時代以来、
情動や直感によって即座に反応する行動パターンが
危険から身を守るのに役立ってきたことと関係がある。

立ち止まって考えたりしていたら、結論が出る前に命がなくなってしまうからだ。



なぜ、感情と理性は何かにつけて対立するのか。

その答えは、脳の進化の歴史にある。

  ちょっと休む?脳について



ヒトの脳は、組織と脳脊髄液を合わせて1.5kgほどある。
進化の系統上最も近い類人猿の脳と比べても3倍の大きさだ。


脳は、何百万年にも渡る生物の進化の歴史の中で、
原始的な部分の上に進化した脳を建て増しする形で発達してきた。


脳の中で最も古い部分は、
脊髄の上端を取り巻く形をした「脳幹」だ。

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これは、ひと通りの神経系を持つ生物には全て共通に備わっている。

脳幹は、呼吸や代謝など、生命維持の基本に関わる機能を調節し、あらかじめ決まっている反応や動作をコントロールしている。

脳幹は、考えたり学習したりする機能を持たない。


やがて、脳幹の上に、情動を支配する部分が発生する。

情動の脳の原点は、においを認識する「嗅葉」と呼ばれる部分だ。

全ての生命体は、それぞれ特徴的な分子を空中に発散している。
風に乗って運ばれてくる臭気がサバイバルに直結していた。

初期の嗅葉はニューロンが2,3層重なった程度の簡単な構造だ。

1段目のニューロンがにおいを感じ取り、
食べられるか毒か、性行動の対象か否か、敵か獲物か弁別する。
2段目のニューロンが神経系を通じて全身にメッセージを伝え、
食いつく・吐き出す・近づく・逃げる・追いかける等の反射行動を命じる。



そして、原始的哺乳類の登場とともに、情動を支配する部分に大きな進化が起こった。


新しい脳が、脳幹を取り巻くドーナツのように発達して
下のほうに脳幹の先端が入りこんだ格好になった。

この新しい部分を「大脳辺縁系」(周りを取り巻いた形だから)という。

  ちょっと休む?札幌秀友会病院[脳のしくみ・大脳辺縁系]

大脳辺縁系は、進化するにつれ「学習」と「記憶」の能力を向上させていく。

この2つの能力が革命的に発達したおかげで、
哺乳類は生死を分ける場面で適切な選択ができるようになった。

周囲の変化にも、いつも決まった反応ではなく少しずつ工夫して適応できるようになった。

嗅覚と大脳辺縁系がつながったおかげで、色々なにおいを嗅ぎ分け、
過去の記憶と照らし合わせて、良し悪しを区別できるようになった。
(この部分を「嗅脳」という)


そして、今から1億年前、哺乳類の脳は一気に大きく成長した。


  2層の薄っぺらい皮質(嗅脳)の上に、
  新たに何層もの脳細胞(「大脳新皮質」)が付け加わった。

  ちょっと休む?広栄ケミカル 自分の体を知る-脳・データ機能-



大脳新皮質は、思考を司る。

感覚器官を通じて得た情報を、人間の脳はここで統合し理解する。

これによって、逆境を生き延びる為の微調整が各段に上手くなると同時に、
そうした有利な神経回路を子々孫々に伝達できる可能性が大きくなる。

人間のサバイバル能力が向上したのは、
作戦を練ったり長期的な計画を立てたりできる大脳新皮質を得たためだ。


これは、人間の感情に様々なニュアンスを付け加えることになった。


例えば、愛情。

大脳辺縁系は、快感と性欲を呼び起こす。これらは性愛の元になる情動だ。
そこへ大脳新皮質が追加されたことで、愛情を育むこともできるようになった。

ちなみに、大脳新皮質を持たない動物の子供は、
孵化すると同時に、親に食われないように身を隠さねばならない。

親子の愛情は家族生活の基盤であり、
長い時間をかけて子供を一人前の人間に育てていくために必要な感情だ。

人間の場合、親子の強い絆のおかげで、子供は生まれた後長い年月をかけて
個体として完成していくことができる。
そしてこの間も脳は発達を続ける。


大脳辺縁系(情動)と大脳新皮質(思考)の連絡は、霊長類が最も稠密であり、
なかでも人間の脳は他とは比較にならないほど発達している。

だから、人間は、さまざまな感情に対して他のどの動物よりも多様で複雑な反応を示す。

例えば、恐怖を感じた時、
ウサギやアカゲザルがみせる反応は一定のパターンに限られている。
しかし、人間は110番通報を含めて、実に様々な手をくりだして恐怖に対処する。

こうした柔軟性は、
社会システムが複雑化すればするほど必要不可欠になっていく。

そして動物の中で最も複雑な社会に生きているのが人間、というわけだ。



しかし、

大脳新皮質は全ての情動を支配しているわけではない。



情動に関わる非常に重大な問題が起こった時、
とくに、緊急事態が起こった時には、大脳辺縁系が大脳新皮質を抑えこんでしまう。

つまり、情動を支配する脳が決定的な部分を握っているわけだ。

-------

原始的な脳が神経の中心を握っているので、
人間は、良く考えないと、自己中心的で動物的な行動をしてしまいやすいことが分かる。

そのような行動は、現代の社会には不適合とされる。

犯罪者は、大脳新皮質や大脳辺縁系がまだ未熟なのか、
環境によって不良品になったのか、高齢で退化したのか
それによって社会での扱いが変わるんだろうな。

ところで、大脳新皮質の上に建て増しされるこれからの脳は、
どのような機能を持つことになるんだろう。

生命維持=脳幹
危険察知・反射行動=臭脳
学習・記憶・情動=大脳辺縁系
思考=大脳新皮質

で、次は?
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by swanote | 2005-01-08 17:02 | 読破口調

EQ(3)―情動と喜怒哀楽の生理学的変化

怒りを感じると、

1. 血液は両手に集まる。(武器を取るか敵を殴る準備)
2. 心拍数が上がる。(激しい動作に必要なエネルギーを作る)


恐怖を感じると、

1. 血液は両足など大きな骨格筋に流れる。(逃げる準備)
2. 顔は血の気が引いて青くなり、同時に体が凍りついたように動かなくなる。
  (その間に逃げるか隠れるか決断する)
3. 注意は目の前の脅威に集中し、全身を緊張状態におく。(いつでも行動が起こせるように)


幸福を感じると、

1. 脳の中で否定的な感情を抑制したり有益なエネルギーの増加を促したりする活動が
  活発になる。(不安感を生じさせる部分の活動が低下)
2. 全身が穏やかに静まった状態になる以外目立った変化は現れない。
  (リラクセーション反応、他人との協調も容易になる)
3. 心が動揺して体が反応しても、比較的短時間で元の状態に戻る。


驚いた時は、

1. 眉をつりあげることで視界を広くし、網膜を刺激する光をより多く取り入れる。
  (予期しなかった状況について多くの情報を収集し、
   正確な状況判断や最適な行動を選択する)


嫌悪を感じると、

1. 何か嫌な物を食べた・嫌な臭いをかいだという顔
  ―鼻に皺を寄せ上唇を歪めて捲り上げる表情
  (有害な臭気に対して鼻腔を閉じる・有毒な食べ物を口から吐き出す仕草の名残)


悲しみを感じると、

1. (楽しいことに対する)活動意欲やエネルギーが低下
  (悲しみで力を落としたヒトを安全な住処の近くに留め置く効用があったのかも?)
2. ひどくてうつ状態になるとからだの代謝機能まで低下


上記の生物学的要素に加えて、
もちろん、個人的な経験や社会の文化も影響する。

なお、嫌悪を感じたときの表情は万国共通らしい。


原始の時代、厳しい環境下でヒトが生き残る為には、
このような情動の反応が即座に起こる必要があった。

つまり、情動だけは原始時代のまま変わらず、現在に至っている。

現代社会では情動のままに行動すると大事件になってしまうのに。
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by swanote | 2005-01-08 07:17 | 読破口調

EQ(2)―著者から日本の読者に

まず、EQを著者は以下のように説明する。

知能テストで測定されるIQとは質の異なる頭の良さであり、
・自分の本当の気持を自覚し尊重して、心から納得できる決断を下す能力
・衝動を自制し、不安や怒りのようなストレスのもとになる感情を制御する能力
・目標の追求に挫折した時でも楽観を捨てず、自分自身を励ます能力
・他人の気持を感じ取る共感能力
・集団の中で調和を保ち、協力しあう社会的能力
である。


つまり、EQについて自問自答するならば、こうなる。


1. 自分の本当の気持を自覚しているか?

2. 自分の本当の気持を尊重して、心から納得できる決断を下しているか?

3. 衝動を自制し、不安や怒りのようなストレスのもとになる感情を制御できるか?

4. 目標の追求に挫折した時でも楽観を捨てず、自分自身を励ますことができるか?

5. 他人の気持を感じ取り共感することができるか?

6. 集団の中で調和を保ち、協力しあうことができるか?


上記の質問で、自信を持ってYesと答えられる項目があるだろうか。
自分は、できているつもりでいて、実はできていないのではないかと思う。


著者は、EQという概念には日本社会で珍しくないものもかなり含まれているという。

思いやり、自制、協力、調和を重んずる価値観は、日本人の本質だからだ。

??
今はどうだろう。

まあ、著者も、最近のニュースから
「日本社会も変化しはじめているのかもしれない」
と書き加え、

いまの日本の青少年にかけられているプレッシャーの大きさを考えると、
不安の処理法を教えていく必要があるように思われる。
また、いじめの増加を考えると、親切や思いやりの教育に目を向ける必要もありそうだ。
生徒にこれだけ大きなプレッシャーをかける学校教育を今後も続けていくならば、
プレッシャーにうまく対処する方法も同時に教えていくべきだろう。
将来、こころの教育は日本人らしさを支える重要なカギとなるかもしれない。

と指摘している。

で、現代日本では、この問題を放置しつづけた結果、
卑劣な犯罪が止まらなくなっちゃったんだな。
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by swanote | 2004-12-31 19:03 | 読破口調

EQ~こころの知能指数

前回書いた共感の欠如した人間で引っ張り出してきた本を改めて読んでいる。

Daniel Goleman著,土屋京子訳『EQ~こころの知能指数』(1996,講談社)という本だ。

ちなみに、原書タイトルは Emotional Intelligenceで、
実は著者自身は「EQ」という言葉を使っていないが、
この本が話題になって「EQ」という言葉が生まれたらしい。

この本は1995年から全米ベストセラーになり続け、当時既に60万部を超えていたそうだ。

翻訳者の土屋氏は、『ワイルド・スワン』も訳した人だ。
この本の文章もまた長編だが、読み易いし面白い。
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by swanote | 2004-12-31 03:29 | 読破口調

沈黙された時

上野啓子の『マーケティング・インタビュー』(東洋経済,2004)を読んだ。

面白かったのは、著者が沈黙の意味するところをタイプ分けしているところ。

「インタビュー対象者が沈黙する意味」を、以下7種類に分類している。

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(1)呆然の沈黙:
 今まで考えてみたことがないから、何も浮かばない。困った!

(2)不明の沈黙:
 質問の意味がよくわからない。他の人はわかったのかな…

(3)一時停止の沈黙:
 どう答えていいのか分からないから、他の人が答えるのを待とう

(4)嫌悪の沈黙:
 嫌なことを聞かれたな。ちょっと話したくない分野の質問だな

(5)躊躇の沈黙:
 こんなことを言ったら、インタビュアーの人に失礼かな

(6)遠慮の沈黙:
 こんなことを言ったら、インタビュー対象者に失礼かな

(7)自明の沈黙:
 えー、こんな当たり前のことに答えないといけないの。言わなくてもわかるんじゃない

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ただ分類するだけでなく、
沈黙された時にどう対応するかについても、
タイプ別に紹介している。

まずは、沈黙されたら
2~3秒待ってみて、「沈黙ですね~」と言ってみる。(これだけで話し出してくれる人もいる)

そして、沈黙のタイプ別に話しかける。

(1)の場合:
 「ちょっと普段は考えないようなことかもしれませんが、
  敢えて考えてみてください。どうでしょう」と切り出す。

(2)の場合:
 「言っている意味がわからなければ遠慮なく言ってください。
  どんなことでもいいですから」と切り出す。

(3)の場合:
 最初は指名せずに待ち、それでも沈黙が続くようなら
 発言の少ない人から「○○さんどうですか?」と指名する。

(4)の場合:
 「答えにくいですか?」と参加者の気持を察知していることを知らせる。

(5)の場合:
 「率直なご意見を言ってくださいね。
  私がこのアイデアを考えたわけではないんですから」と前置きする。

(6)の場合:
 「人はそれぞれ全く違う考え方や感じ方があって当然です。
  ここで人と違う意見を言っても、その人を批判したり、傷つけているわけではありません。
  ですので、ご自身がどう思うかを率直に言ってくださいね。」と言う。

(7)の場合:
 「みなさんにとっては当たり前に事かもしれませんが、
  私に説明するようなつもりで言葉にしてみてください」と言う。


相手に沈黙された時、どうして黙っているんだろうと悩むことがある。
日常生活でも活用できそうだ。
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by swanote | 2004-12-09 02:38 | 読破口調