共感の欠如した人間

なぜいい年した大人の男が、卑劣な犯罪をするのだろうか。
なぜ似たような犯罪が多発するのだろうか。

<奈良女児殺害>誘拐容疑で36歳男逮捕 自宅から携帯発見

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最も卑劣な犯罪を犯す人間の多くは、共感が欠如している。
この悲しむべき心理的断層は強姦犯、子どもに対する性犯罪者、家庭内で暴力犯罪を起こす者たちに共通して見られる。
彼らは共感を抱くことができない。
犠牲者の痛みを感じることができないから、自分に対して犯行を許す言い訳ができるのだ。


たとえば強姦犯は、「女は本心は姦って欲しいのさ」とか「抵抗するのは嫌がっているフリをしているだけだ」などという。

幼児に性的いたずらをする犯罪者は、「子供を傷つけてるわけじゃない、愛情表現しているだけだ」、「これだって愛情のひとつの形だ」という。

子供に暴力をふるう親は「厳しくしつけているだけだ」という。


これらの言葉は心理的に「問題あり」と診断されて
治療を受けることになった犯罪者たちが語ったものだ。
彼らは犯行時や犯行の準備をしているあいだ、
自分自身に向かってこのように言い訳していた。


犯行者が犠牲者に害を加えている時、
その残忍な行為を助長する情動サイクルの一環として、
ほとんど例外なしに共感の抹殺というプロセスが含まれている。


たとえば幼児に性的いたずらをする犯人に典型的に見られる情動の変化を追ってみよう。


犯罪にいたる情動サイクルは、犯人が怒り、抑うつ、寂しさなどの感情で
いらいらするところから始まる。

いらいらは、テレビで幸せそうなカップルを見たあとで
ひとりぼっちの我が身を振りかえって気分が落ち込む、といったことが引き金になる。

いらいらしてきた犯人は、子供との心暖まる友情など
お気に入りのいつもの空想を心に描いて自分自身を慰めようとする。

空想はしだいに性的になり、自慰行為で終わる。


自慰行為によって少しは悲しさが和らぐが、長続きはせず、
憂うつと淋しさは一層ひどくなって戻ってくる。


犯人は空想物語を現実に演じてみたいと思いはじめ、
自分自身にむかって「子供が肉体的に傷つかなければ別に悪くないんじゃないか」とか
「オレとセックスするのが本当にイヤなら子供のほうからやめるって言えばいいんだもんな」
などと弁解しはじめる。

この時点で、犯罪者は倒錯した空想のレンズを通して子供を見ている。

生身の子供がどう感じるだろう、といった共感はない。


このような相手の感情に対する無関心がその後に起こるひとつひとつのこと
-子供をひとりきりで連れ出す計画、犯行の念入りなリハーサル、そして計画の実行-
に共通する特徴だ。

すべてのことが、まるで被害者には感情がないかのような調子で進められていく。

犯罪者は自分の空想に出てくる従順な子供の姿を被害者の上に投影しているのだ。


被害者の感情-激しい嫌悪や恐怖-は意識にのぼらない。
そんなことになったら、犯行の楽しみは「だいなし」だ。

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ここまでの文章は、ダニエル・ゴーマン著『EQ~こころの知能指数』から引用した。

この本は、1996年に日本語に翻訳された本なのに、読んでいると日本の今の問題で
思い当たるところが多い。また読み直してみようと思う。


ちなみに、そのような人間への治療で欠かせないのはこれだ。
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幼児に対する性的いたずらのような罪を犯した人間を治療していくうえで
最近とくに注目されているのは、犯人の心の中で被害者に対する共感が
完全に欠如しているという点だ。

有望視されている治療プログラムの一例を紹介しよう。

まず、犯罪者は自分が犯したと同じような犯罪のいたましい内容を
被害者の視点からつづった文章を読む。
性的ないたずらが自分にとってどんなものだったかを
涙ながらに語る被害者のビデオを見る。
そのあと、自分のしたことを被害者の視点から、
被害者がどう感じたか想像しながら文章に書く。
そして心理療法グループの前でその文章を読み、
犯行に関する質問に被害者の視点で答える。
最後に犯行の状況を再現し、犯罪者が被害者の役を演じてみる。


この療法を考案したバーモント州立刑務所の心理学者ウィリアム・パイサーズは、
次のように話してくれた。
「被害者に共感できるようになるとものの見方が変わるので、
自分の空想のなかでも相手の苦痛を否定するのは難しくなります」。
それによって、倒錯した性衝動を抑止しようとする動機づけも強まるにちがいない。
刑務所で治療プログラムを受けた性犯罪者の出所後の再犯率は、
治療を受けなかった犯罪者の半分だった。
最初に共感にもとづく動機づけをしてやらないかぎり、
その後にどんな治療を試みてもうまくいかないだろう。

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by swanote | 2004-12-31 03:01 | 反応
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